笑顔相続のススメ⑤
皆さんこんにちは!
今回も、相続診断士が伝える心温まるお話、「笑顔相続のススメ」シリーズをご紹介します。
もしあなたに万一のことがあった時、想いを遺すことで、残されたご家族は笑顔相続をすることができるかもしれません。ぜひ、ご一読ください。
一般社団法人ながさき住まいと相続相談センターでは簡易版のエンディングノートを無料で差し上げておりますので是非お気軽にお立ち寄りください。
【前妻の子どもとの縁】
相続対策の依頼を受けると、最初に親族関係をお聞きすることになります。これは、相続人が何人いるのかを確認するとともに家族構成や家族関係を聞くことによって、相続が起こった時に遺産分割をスムーズに行えるかどうかを知るためです。
先日、相談に来られた方の親族関係図を作成したところ、お父様(70歳)、お母様(68歳)、長男(37歳)、長女(35歳)の他に、お父様と前妻の間に娘(42歳・以下「A」)がいました。
お父様は寝たきりになっていましたが、少しお話をしたところ、「前妻とは離婚のときに関係が切れていて、Aとも会っていない。Aがどのような生活をしているかもわからない」とのことでした。
前妻と離婚していてもAとは戸籍上の親子関係が続いており、相続が発生した際には相続権があります。今回のケースでは遺産の6分の1の持ち分をAが持つことになります。
そのため、今お父さまが亡くなった場合は相続で揉める可能性が非常に高くなります。ご家族からすれば「会ったこともないAになぜ財産を渡さなければならないのか」となりますし、Aも「もらえるものならばもらいたい」と思うものです。ましてAが母子家庭で苦労していれば、交渉は難しいことが多いでしょう。
関係修復で笑顔相続に
相続診断の結果、相続税の申告と納税が必要であることがわかりました。そのため最終的にはAに会って、話し合いの上で相続税申告書等に押印をいただくことになります。
私は、相続の問題もありますが、実の親子が亡くなるまで会うことなく終わってしまうのはあまりにも悲しいことだと考え、「お父さまがご存命のうちにAに会ってみてはいかがでしょうか」と提案してみました。
当初、ご家族は見ず知らずのAとの面談に不安を感じていましたが、結局会わなければならないのであれば相続発生前のほうがよいということになり、面談を決めました。
面談の前にできうる準備をしようということになり、遺産分割対策としてお父様が生命保険に加入することにより受取人を指定したうえでその他の財産もAに配慮した形で遺言書を書いてもらいました。
面談の際、最初はわだかまりがあるように見えましたが、話を続けるうちに解消されていきました。また、Aは遺産分割に配慮してくれていたことに感動していました。その結果、親子の縁が修復され、笑顔相続を迎えることができたのです。
ただ、当初面談することを決めた際、大きな問題が発生しました。お父さまがAの住所を知らなかったのです。相続発生後であれば、相続の為に戸籍謄本などを司法書士のような士業は職権で取ることが可能です。しかし、相続発生前は個人情報などの関係上、取得が難しくなります。
たまたまAが離婚時の住所に住み続けていたので探すことができましたが、もし住所がわからず、会うことができなかったらどうなっていたでしょうか。ご家族は、お父さまが亡くなるまでAがどんな人かもわからず漠然とした不安の中で過ごさなくてはなりません。何より、親子の関係は永遠に修復できません。
離婚をしても子どもとの縁は簡単には切れません。そのことをしっかりと認識して、連絡が取れるようにしておくことが大切です。