笑顔相続のススメ③

皆さんこんにちは!

今回も、相続診断士が伝える心温まるお話、「笑顔相続のススメ」シリーズをご紹介します。

もしあなたに万一のことがあった時、想いを遺すことで、残されたご家族は笑顔相続をすることができるかもしれません。ぜひ、ご一読ください。

 

一般社団法人ながさき住まいと相続相談センターでは簡易版のエンディングノートを無料で差し上げておりますので是非お気軽にお立ち寄りください。

 

【亡き母の手紙が遺族のわだかまりを解く】

 

 家はどうしても長男に継いでほしい!家督相続がなくなったとはいえ、家とお墓は長男に継いでもらいたいと思ってる人はまだまだ多いのではないでしょうか。

 

 東京郊外に住んでいた母(86歳)には、長男(64歳)、長女(61歳)、次女(59歳)がいました。子どもたちはそれぞれ結婚しましたが、母は同じころに夫を亡くしました。当時長女は結婚を機に実家を出ましたが、母と長男夫婦、次女夫婦はそのまま実家の一つ屋根の下に住んでいました。

 

 長男の嫁は幼い頃に両親を亡くしており、東北に住む夫婦の養子として引き取られました。長男夫婦の結婚当初の意向としては、実家を出て、東北で養親と一緒に暮らしたいという思いがありました。しかし、母は実家の土地とお墓は長男に継いでもらいたいと譲らなかったため、長男夫婦は家を出るのをあきらめ、そのまま実家に残ることになりました。その後、次女夫婦は家の隣にある母が所有していた貸しアパートを取り壊し、自分たちで家を建てました。

 

 年月が経ったある時、長男の嫁は、「母の世話は一切しない」と言い出しました。母は、長男夫婦と同じ家に住んでいながら、自分の娘が隣に住んでいたことから、何でも頼み事は次女にしてしまっていたそうです。もともと実家を出て東北の養親の元で暮らしたかった長男の嫁にとって面白いはずがありません。長男夫婦と母や次女夫婦とは次第に仲が悪くなってしまいました。

 

 そんななか、母が脳梗塞で倒れ、施設での生活を余儀なくされました。

次女は毎日のように施設に足を運び母の世話をし、少し離れたところに住んでいる長女も時間のある限り、母の世話をしていました。一旦、仲の壊れた長男夫婦はほとんど世話をすることがありませんでした。

 

 脳梗塞を患ってから7年後に、母が亡くなりました。母の相続財産は、実家と次女夫婦のお家が建つ土地4,000万円、建物500万円、現預金1,500万円、上場株式500万円、そして長男受取の保険金500万円がありました。

 

 遺品を整理している際に、母からの手紙がみつかり、手紙の内容は、遺産分割の方法と長男の嫁への感謝・謝罪の念も書かれていました。

 

 遺産分割については、実家(土地建物)は長男が継ぎ、次女夫婦の家が建っている土地(土地のうち1/2)は次女へ、現預金は長女、次女そして長男の嫁で1/3をし、上場株式は長女へとなっていました。

 母としても長男夫婦を引き留めてしまったこと、娘にばかりお願い事をしてしまったことに非常に後悔し、長男の嫁に対しても財産を分配したいということでした。

 

 長男夫婦は母の想いを知り、最後まで母の世話をしなかったことを悔みました。今回、母の想いは手紙として書かれていたため遺言の様式が整っておらず、法的な拘束力はありません。長男は、嫁の養親がまだ健在で、東北へ住みたいという思いがあったので、家とお墓については次女に託し、財産は貰わなくてよいということでした。最終的な遺産分割は、不動産は次女が、その他の財産については長女が相続することになりました。

 

 嫁いできたお嫁さんは義理の親との関係や介護などで辛い思いをしているケースが多いものです。しかし、いざ相続が発生した時には法定相続人ではないために、お嫁さんへの遺産分割は遺言書でなければできません。

エンディングノートに日頃の感謝を書くとともに、様式の整った遺言書を作成し、さらなる笑顔相続につなげてみてはいかがでしょうか。